血圧とは
血液が血管壁に与える血管内圧のことで、大動脈など太い血管の内圧を指します。
血圧の単位はmmHgで表示されます。これは、水銀柱を100mmまで押し上げる力を意味しています。
水銀の比重は水の13.6倍なので、水柱なら136cmに相当します。
◎血圧=左心室からの心拍出量×総末梢血管抵抗
左心室からの拍出量は心臓のポンプとしての強さ(心収縮力)と血液全体の量(血液量)が影響してきます。
総末梢血管抵抗は全身の血管の内径や弾力性が関わってきます。
血圧調節のメカニズム
★血圧は、自律神経、ホルモン、腎臓の3つで調節されています。
★個々の調節はそれぞれ発現までの時間や調節能力の大きさが異なります。
◆自律神経による調節
交感神経と副交感神経の二重調節により血圧維持をしています。
◎交感神経は、心臓に対しては心拍数と心収縮力の亢進を介して左心室からの心拍出量を増加させます。
末梢動脈に対しては、血管収縮の亢進を介して血管抵抗を増加させます。
◎副交感神経は、これとは逆に作用し、バランスをとっています。
◆ホルモンによる調節
・セロトニン、アルドステロン、抗利尿ホルモンは血圧を上げる作用があります。
・利尿ペプチド、プロスタグランジンは血圧を下げる作用があります。
このようなホルモンによって血圧を調節しています。
◆腎臓による調節
腎臓には強力な血圧調節の機能が備わっています。
尿の産生・排泄を介して、
①老廃物の排泄
②体内の水分調節
③体内の塩分調節
という役割をはたしています。
特に、水分と塩分の調節は血液量にもつながるので重要です。
また、腎臓は、神経とホルモンの作用と密接に関わりならが血圧を調節しています。
♦︎各調節系とその作用時間について
●秒で反応
・圧受容器では、血圧の上昇を感知し、迷走神経が働き血圧を下げます。
・化学受容器では、酸素の低下、二酸化炭素の上昇、酸性に傾くと、血圧を下げます。
●分〜時間で反応
・動脈壁の緊張と弛緩では、血液の量が増えた場合に、血管が伸びて、血圧を正常にします。
・レニン・アンジオテンシン性の血管収縮では、ホルモンにより血管を収縮させて血圧を上げます。
・毛細血管内外での体液の移動では、血圧が高い時は体液を外へ、低い時は内へ移動し、血圧を一定に保ちます。
●数時間〜で反応
・腎臓における体液量の調整では、尿量の増減で調整します。全ての調節系で一番、調整能力が大きいです。
・レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系では、ナトリウムと水の再吸収を促し、血圧を上げます。
・バソプレシンでは、水の再吸収を促して、血圧を下げます。
血圧の日内変動
★通常、血圧は、昼間稼働時に血圧は上昇し、夜間睡眠時に低下するというパターンを示します。
★日内変動は、身体活動量のほか、日中は交感神経が働き、夜は副交感神経が働くことが関係しています。
★血圧の変動には、飲酒、喫煙、コーヒー、ストレス、睡眠量、運動量、寒冷などによってもひきおこされます。
血圧の加齢に伴う変化
血圧には、収縮期血圧(上)と拡張期血圧(下)があります。
女性は、収縮期血圧で25才から上昇が始まります。拡張期血圧で45才から上昇がとまり緩やかに下がります。
男性は、収縮期血圧で35才から上昇が始まります。拡張期血圧で45才から下ります。
年齢の経過と共に血圧の値は変化します。
それは、血管壁の弾力性の減少(血管自体の柔らかさや硬さ)、血管の内径狭小化(脂肪や血液の塊などで狭くなります)が加齢に伴い変化するためです。
脈圧とは
収縮期血圧(最大血圧)と拡張期血圧(最小血圧)との差です。たとえば、収縮期血圧が130mmHgで拡張期血圧が80mmHgであれば、脈圧は130−80=50で、50mmHgです。
脈圧は、「中枢の太い動脈の硬さをチェックする指標」です。
脈圧の上限は60mmHgです。それ以上ある場合は危険信号です。
脈圧が高いほど、心筋梗塞など、心臓の病気のリスクが増します。
ただし、脈圧の値が低ければ低いほど良いかというとそうではなく、およそ30mmHgが正常範囲の下限の目安です。
脈圧は、太い血管の柔軟性や現段階での動脈硬化の進行度合いを示しています。
平均血圧とは
収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)から求められる、平均して動脈にかかっている血圧のことです。概算ですが、計算式は以下になります。
平均血圧=拡張期血圧+脈圧÷3
たとえば、収縮期血圧が125mmHgで、拡張期血圧が80mmHgの場合、平均血圧は80+(125-80)÷ 3 =80+15=95で、95mmHgになります。
平均血圧は、末梢の細い血管の動脈硬化を知るための指標となります。平均血圧は100mmHgを超えないよう、できれば95mmHg未満であることが望ましいとされています。
高血圧の基準値だけでなく、脈圧と平均血圧を知ることで、動脈硬化の具合や心筋梗塞などの心臓病のリスクの判断材料になります。ただし、脈圧、平均血圧の数値が高かったとしても、生活習慣の見直しによって自分で改善することができます。
鍼灸での治療法
鍼灸治療は、一般的な本能性高血圧症に効果があります。二次性高血圧症の場合は薬できちんとコントロールする必要があります。
●本能性高血圧症
発症年齢は、35才から、症状の進行は徐々におこり、家族歴があります。薬が効きます。
●二次性高血圧症
発症年齢は、35才以下、60才以上。症状は急速に変化します。家族歴はないことが多いです。薬が効かないことがあります。検査で、電解質異常、蛋白尿、腎機能異常があります。
鍼灸治療では、末梢血管抵抗の改善や自律神経機能の調節を目的として行います。
特に様々な身体的、精神的自覚症状はストレスとして血圧を上げる原因となります。
鍼灸治療によって、体を整え休めることで血圧を正常な値に戻すことができます。
以下の文献を参考にしました。
・廣正基:図解 鍼灸療法技術ガイド 754ー765
・藤島正敏:病気がみえるvol2 258ー267
・東洋療法学校協会編:生理学 114ー119、149ー210、281
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