鍼灸治療により痛みや症状が改善するのはなぜか?
説明の上でのキーワードは下記の4つです。
- 自己治癒力
- 筋肉
- 血流改善
- 脳が反応
まずはじめに、鍼灸治療は自己治療力を応用した治療法になります。自己治癒力を介した治療法は、体に本来、備わっている自己の自然治癒力を高め、痛みや症状を治すことができるため、体にやさしい治療法になります。(京都大学再生医科学研究所 田畑康彦)
自己治癒力とは自分の力で病気を癒し、治す自然の力のことです。例えば、膝にすり傷をつくり、血が出てきても、放っておくといつの間にか元通りに治っています。(特定非営利活動法人 日本成人病予防協会)これはなにも宗教的なことではなく、血液の中には、血小板、白血球、フィブリノーゲンなどの栄養物質が含まれており、自然治癒力に必要な物質が体にはもともと備わっていました。鍼灸は、体に治療のために傷をつくり、自然治癒力を活性化させる治療法です。
鍼灸は、一般的に皮膚、脂肪層、筋肉と組織を貫きます。筋肉のことについて説明します。筋肉は体のあらゆるところにあります。腕や足を動かす骨格筋(こっかくきん)は横紋筋(おうもんきん)で、随意筋(ずいいきん)といい自分の意思で動かすことのできる筋肉です。不随意筋には心筋(しんきん)や内臓や血管の平滑筋(へいかつきん)があります。筋肉はストレスに反応する組織です。ストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。(厚生労働省)私の解釈では、自分の意思では、どうすることもできないこと全てがストレスだと考えています。例えば、信号が赤になること。赤でイライラする人もいれば、そうでない人もいます。余談ですが、そのイライラがストレスです。そして、ストレス耐性が低い人は病気になりやすく、耐性が高い人は病気になりにくい傾向があります。話を戻すと、ストレスによって筋肉は緊張します。その緊張が人によって出る部位が違います。頭、首、肩、背中、腰、心臓、胃、消化器系に出ることがあります。肩にでれば肩こり、消化器系にでれば下痢、便秘というような症状です。鍼灸は筋肉の緊張を緩めることができます。筋肉を緩めることで様々な症状を改善します。そのため、病院や接骨院、整体院で治らなかった症状が良くなることがあります。
鍼灸で筋肉が緩まるのは、血流改善がおこり、自然治癒力により生じたことです。筋肉の緊張とはグーの状態です。それは血管が縮こまり、血流が悪くなり、組織に栄養が行き届かなくなった状態です。筋肉の正常な活動とはグーパーグーパーと伸び縮みをすることです。血流改善により、症状のある部位に栄養を送ることができます。鍼を組織に刺すことで血はでませんが、組織が刺激を受けて傷を治そうと体はします。そのことで、自然治癒力が高まり症状を治していきます。鍼灸では、筋肉が過度に緊張している部位ではそれなりの刺激があります。この刺激は人それぞれ感じ方が違います。注射の痛みとは違います。注射が苦手な人でも鍼灸の刺激は平気もしくは心地良いという人もいます。生涯で鍼灸を受ける人の割合は5%です。100人いて5人です。つくば市は20万人なので1万人です。鍼灸を知らないのも仕方ありません。
最後に、鍼灸と脳についてです。鍼灸で刺激する部位は、足や背中などです。その部位が刺激を感じているのではありません。感じているのは脳です。皮膚には痛覚、触覚、温冷感覚があります。電気信号で脊髄を通り脳で感じています。そのため、その電気の放散が消化器や自律神経などに伝わり、筋肉などの整形外科の症状以外にも鍼灸は効果が期待できます。刺激もストレスです。脳が全てのストレスを感じています。患者様にお願いすることは、鍼灸を受ける時は、痛くても、怖くても、症状が良くなるのだと脳で思うようにしてください。それが鍼灸の効果を10ひきだすことになります。これが、鍼灸が効きやすい人と、効きにくい人がある理由の一つです。
また、余談になりますが、脳と筋肉について、生活上で全ての筋肉を使っているわけではありません。右利きの人は、左側を使わずに生活しています。そして、左側で歯を磨こうとするとぎこちなくなります。それは、右側よりも使っている筋肉の数が少ないことが考えられます。筋肉を動かすことで脳の血流が増えることがわかっています。動かせる筋肉が増えることは脳トレになります。
鍼灸は、筋肉を刺激することができます。自分では動かせない筋肉を鍼灸で動かせることができます。脳の血流も増えていることが期待できます。
参考文献
・自然治癒力を高める医療「再生医療」ー再生治療と再生研究ー 田畑康彦 薬剤学,74(3),202-208(2014)
・はりきゅう理論 東洋療法学校協会編 医道の日本社 43-101
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